月末の自分へ

【第一章】ep2.ブラック営業マン_泥にまみれる

走り続けた3年間。

目次

圧倒的訪問

これは私が新人として配属された営業所のスローガンである。

とにかく1件でも多く訪問すること、訪問量は裏切らないという事を新人時代に叩き込まされた。

当時は全国で訪問件数のランキングが公表されているほどで、営業マン別で訪問件数がわかるようになっていた。

それほど会社全体で訪問量に拘りを持っていたのだ。

そうなると必然的にこの営業所に配属された「新人」はこの「圧倒的訪問」というミッションの完遂を余儀なくされるわけだ。

上司から「まず新人は全国で1位の訪問件数を達成させること」そう号令がかかった。

その営業所に配属された新人は私一人だけである。

そう、その新人は「私」のことである。

そして私の後ろには「鉄人ブラザー」がいるわけだ。

有難いことにやらざるを得ないゴールデンカーペットが敷かれていたわけだ。そう、逃げられない。

一度素直にやってみる

これは私が感じた教訓の一つでもあり、新人の特権でもあると思う。

当時はこの「圧倒的訪問」が本当に意味があるのか分からないが、とりあえず大変そうだなとは感じた。

ほとんどの人は「そんなに訪問したって意味がない。大事なのは訪問の質だ。」と思うだろう。今の私もそう思う。

ただ当時はそう思っても周りを納得させる根拠を何も示せなかった。新人だから当たり前である。

なのでやってみて意味があるのかないのか自分で判断しようと思った。そう素直になれたのは何も知らない新人だったからだと思う。

まず、現在1位の訪問件数を確認してみた。月平均で290件前後だった。なので私は300件以上/月をこなせば1位になれると考えた。

稼働20日と仮定したら15件/日で300件になる。圧倒的になるには16件/日だなと考えた。つまり320件/月の訪問件数である。

実際にやってみた。

正直めちゃくちゃ大変だった。入社1年目で担当する得意先の数も少ないし、訪問できる上限数が明らかに少なかった。

どうしたかと言うと、得意先のその先のお客様へ訪問したり同じ得意先を1日に2度訪問したりしていた。ノルマの件数まで届いていないときは、絶対いないとわかりきっているが夜22時に訪問して名刺をポストに入れたりした。そうなると名刺の減りが早すぎるので自己紹介シートを自作してそれをポストに投函したりした。

それを入社1年目の営業デビューした10月~3月までの半年間やりきった。まさに泥にまみれた期間である。

活動日報を書くのに貴重な土日の半日を消費したりしていた。正直もう二度とやりたくないと今でも強く思う。

結果

  • 入社一年目を対象に開催される新人コンテストで1位を獲得
  • 訪問件数も全国1位を獲得
  • 県の業績表彰で3位を獲得

ちなみに「鉄人ブラザー」はその時、県で2位の業績だった。ここまでやっても勝てないのかと。本当に凄いなと改めて痛感した。

一応、結果として成果が得られたので良かったというのが当時の率直な感想だった。

また当然この結果を得られたのは私一人の力ではない。月末近くになると売上計画をなんとか達成して、新人の私に華を持たせようとブラザーを筆頭に営業所の先輩方が力を貸してくれた。

時には一緒に得意先へ訪問し、最後の売上のお願いをしてくれたりした。

本当に諸先輩方の多大なるご協力ご支援のおかげである。改めてこの場を借りて感謝いたします。本当にありがとうございました。

こうして入社1年目が終わった。

やってみてわかったこと

まず圧倒的に得意先との良好な関係構築までのスピードが早くなるということだ。

もちろんこれは業界によって賛否があると思うので、あくまでも私が勤めている業界に限ってということで捉えて頂きたい。

「商品知識もない」「質問への回答も時間がかかる」「ニーズに対しての提案もできない」など。正直、新人は何も知らないし得意先にとっては全く役に立たない存在である。

でも唯一できることがある。そう、それが「訪問」なのだ。前任の先輩との違いで評価される点が唯一あるとすれば「訪問量」だと思う。

得意先の社長から「何も知らないのにうちに来たって意味がないじゃないか」とよく言われた。そのたびに「社長と仲良くなりたいので毎日来ているんです」と答えていた。

これを毎日最低でも1か月続けていれば、多くの人は対応が変わってくる。

次第に心を開いてくれるようになるのだ。その瞬間、なんとも言えない達成感を感じることができる。

相手との信頼を何で勝ち取るのかは人それぞれ違うと思う。商品知識の場合もあれば、提案力、ソリューション力などなど。

新人の私の場合それが「訪問量」だったのだ。

相手との距離感に応じて、自分の持っている武器を使い分けて関係を構築していく事が必要である。

そしてその武器の数を増やしていくことが大事で、その過程で人は成長していくのだと思う。それが人生を豊かにすることに繋がっていくのだと。

賞味期限付きの武器だが、新人や若手が平等に持っている武器は「若さ、元気さ、体力」だと思う。

それが「訪問量」に変わることで関係構築に繋がってく。

そのことを入社して3年間で学んだ。

だが、一息つく間もなく、ここから私の社会人生活は更なる苦境へと突き進んでいくことになる。

それでは、次回「どん底」でお会いしましょう。

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