月末の自分へ

【第一章】ep7.ブラック営業マン_断固たる決意

強い意志を持つ。

目次

予言の真実

「覚悟した方がいいわ。」その予言の本当の意味を知ることになった。

社畜生活、第二章の突入である。

またしても人員減による負荷の増大である。

しかし、今回は今までとはレベルが違った。

前任者の担当先がそのまま全て私に引き継がれることになったのだ。現在担当している主要先をそのまま残し、更にドン!である。

得意先の規模、営業エリア、当然売上計画は倍以上に膨れあがった。

更にその方は会社自体を辞めてしまったので、不明点を聞くに聞けないというおまけもついてきた。

新しい期のスタートは前任者案件のクレームのオンパレードで始まった。毎分毎分、催促の電話。電話を受けた私も何も把握していないという事でお客さんの怒りは更に膨れ上がっていった。

謝罪から始まり、謝罪で終わる。そんなコミュニケーションの連続だった。

毎日、激怒という銃弾を受け続ける生活だった。まるで戦場の最前線に立ち、強敵に立ち向かうソルジャーのようだった。

そんな私の防御は前任者が残した引き継ぎ書という紙切れ一枚のみである。そんなもので勝てるわけがない。さすがに馬鹿な私でも戦う前にわかる。

しかし、戦場は待ってくれない。ほぼ丸腰で火の吹いたクレーム現場に足を運び、案の定返り討ちに遭い退散するという事も経験した。

クレーム現場で罵倒されながら、今現場で何が起きているのかを把握するのだ。なんとも間抜けなソルジャーである。

先方のお相手は、罵倒されながらメモを取る私をどう思っていたのだろう。

相手の間抜けなソルジャーがまさかのまさか、丸腰姿で戦地で防具を拾い集めているのである。リアルな戦場ではあり得ない光景である。

そんなソルジャー生活、クレーム消火月間が新しい期のスタートから何ヵ月か続いた。

「負けないで」何度聴いたことか。幾度となく私をどん底から救い上げてくれたこの曲は、思い出とともに一生忘れることはない。

モチベーションは怒り

クレーム消火活動の任務が終わっても、問題は待ってましたと言わんばかりに次々に起こった。ソルジャー生活続行を余儀なくされた。

モグラたたきゲームをしている感覚だった。叩いても叩いても次から次へと色んな問題が起こるのである。ほんと100円で随分と汗をかかせるゲームである。

この時すでに私の土日の休日はなくなっていた。

途中から平和な日常というものがどんな日なのか分からなくなっていた。

毎日常に何かに追われ、気づいたらその日が終わる。という日々を繰り返していくうちに、一体自分は何をやっているのだと思うようになった。

「環境を変えるのは自分次第」という言葉もあるように、自分自身で何かを変えなきゃダメだと思うようになった。

無論、その行動を起こすモチベーションは、まぎれもなく「怒り」という感情が原動力だった。

「なんで自分ばかり」「絶対このままで終わらない」「負けてたまるか」そんな感情が自分の中で渦巻いていた。

仕事のタスクも「怒り」のモチベーションでこなしていった。「こんなものに負けてたまるものか」と。

この時は、生活の中心が仕事だった。もちろんそれは土日でもだ。常に仕事の残タスクに応じて土日の休息時間が決まっていた。

反面、健康面を考慮し、近所のジムに通っていたが、休日の仕事時間確保のため朝7時からジムに行き、そのあと仕事、というルーティーンを繰り返していた。

こんな環境を変えたいと思いながらも、何もできていない自分に対する「怒り」も大きかったと思う。

我に返る

とある日曜日、5月の昼下がりのことである。

私は、目の前の光景に呆然としていた。

目の前に広がる、あたり一面の芝生の上で、親子でキャッチボール、気持ち良さそうに寝そべり日向ぼっこ。

忘れていた平和な日常が目の前に飛び込んできたのだ。

その瞬間、肩の力が一気に抜けたのがわかった。そして「このままではダメになる。」とっさににそう思った。

ふと我に返った。

気付かぬうちに「怒り」を溜め、肩に力が入り、周りが見えなくなっていたということに気づかされたのだ。

大げさに聞こえるかもしれないが、世界が変わった瞬間だった。

そしてそんな私の隣には、戦友がいた。

その戦友は、一足先に人生の戦場から抜け出し、自分の人生を歩いている人生の先輩である。

そんな戦友とその場で腰を下ろし、これからの人生について2時間ほど語り合った。

私の中で、何か変わった。今後の人生において進むべき道、光る道筋を見つけることができたのだ。

その日の帰り道。

片道車で3時間の帰路の中、私の頭の中は今日体験した衝撃的な出来事と抱いた危機感で埋め尽くされ、今の環境からの卒業を心に固く誓った。

それと同時に、私は心の中で「これから私に起こる変化」を想像し、笑っていた。

その日ようやく私は人生のスタートラインに立ったのである。

それでは、次回「今いる場所で」でお会いしましょう。

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